「ていく」と「てくる」の6つの使い方を例文を使って説明!

日本語にふれるとよく聞く「てくる」と「ていく」。

この2つは、日本語学習者にとっては混乱しやすいので、この記事では例文を使って違いを説明していきます。

 

その前に「いく」と「くる」の意味を確認しておきましょう(‘ω’)ノ

 

行く:<移動主体>が今いる位置から遠くへ移動するときに使う動詞
来る:<移動主体>が遠い位置から話し手の近くへ移動するときに使う動詞

どちらも「移動」を表す動詞です。

 

この「いく」「くる」を補助動詞として使う「ていく」と「てくる」には、いろいろな使い方があります。

大きく6つの使い方に分けて説明しますので、さっそく1つずつ覚えていきましょう( ..)φ

 

移動・方向(何か動作をしながら移動する・ある状態のまま移動する)

 

よく使われる使い方の1つとして、「何か動作をしながら移動する」というものがあります。

これは、大体移動するときの手段(状態)を言うことが多いです。
たとえば、「友達が走ってくる。」という文は、友達が話し手の近くへ「走る」という手段を使って「来る」ということです。

<移動主体>が今いる位置から遠くへ移動するときには「ていく」
<移動主体>が遠い位置から話し手の近くへ移動するときは「てくる」

例文

  1. 駅まで歩いて行く
  2. 今日は飲み会なので、電車に乗って行く
  3. 会社は不便な場所にあるので、車を運転して行く
  4. 鳥が飛んでくる

 

このように移動を表す場合には、「て行く」「て来る」のように漢字表記することもできます。

 

 

ある期間の継続的動作・継続的状態

 

こちらも、かなり頻繁に使われる使い方です。

「ある期間の継続的動作」という<継続>を強調して表す用法で、

過去から現在まで続いた動作には「てきた」
未来へ向かってこれから続ける動作を「ていく

を使います。

「てきた」を使うと、はっきりと期間を言っていなくても、その動作がある期間続いたのだと推測できますし、

「ていく」を使うと、1回だけの出来事ではなくて、その動作を継続するのだと推測できます。

例文

  1. 5年前からコツコツお金を貯めてきた
  2. これからは同じミスをしないよう気を付けていく
  3. 今まで我慢してきたけど、これからはやりたいことをして生きていく
  4. 4年間、毎日30分英語を勉強してきたので、字幕なしでも洋画を見られるようになった。

 

 

 

途中動作

 

この表現は

「ていく」:今いる場所から目的地へ行くまでに途中で何かの行為をする場合、
途中動作を示して「~ていく」と一緒に使います。
「てきた」:今はもう目的地に着いているが、途中で何かの行為をしてきた場合、
途中動作を示して「~てきた」と一緒に使います。

例文

  1. ケーキを買っていく。(今は家にいて目的地には着いていない。途中でケーキを買ってから目的地に行く予定。)
  2. ケーキを買ってきた。(今はもう目的地にいる。途中でケーキを買ってから目的地に着いた。)
  3. コンビニに寄ってきた。(今はもう目的地にいる。途中でコンビニに寄ってから目的地に着いた。)
  4. ガソリンを入れていく。(まだ目的地に着いていない。途中でガソリンを入れてから目的地に行きたい。)

 

よく使う表現としては「今からそっちに行くけど何か買っていこうか?」「近くのカフェでコーヒー買ってきたよ。」などがあります。

目的地までの途中で何かしたことを伝えるこの使い方も、日常会話でよく使われます。

 

一方的な動作・行為

相手から「一方的に動作」を受ける場合は「~てくる」を使います。

こちらは望んでいない行為や予想外の行為を受けたときに使うので、「~てくる」を使うと話し手のいやな気持ちを表すことができます。

例文

  1. 上司がコピーを頼んできた。☞「いやだな~コピーしたくないな~」という気持ちが予想できる。
  2. 友達がボールを投げてきた。☞「いやだ」または「予想外で驚いた!」という気持ちが予想できる。
  3. 隣人が苦情を言ってきた。☞「苦情を言われて嫌な気持ち」が予想できる。
  4. 隣のクラスの男の子が連絡先を聞いてきた。☞「いやだ」または「予想外で驚いた!」という気持ちが予想できる。

 

補足となりますが、「訪ねる」などの移動を表す動詞の場合は、「てくる」と一緒に使うと、“話者のところへ”という意味をくっつけることができます。

「先週、地元の友達が訪ねた」☞「だれを訪ねたのか?」はっきり分からない。

「先週、地元の友達が訪ねてきた」=「先週、地元の友達が私を訪ねた」

 

この「移動を表す動詞」の場合は、必ずしもいやな気持ちや驚きを表すわけではないので、言い方や話の流れ次第で話者の感情を予想します。

 

一方、

「ていく」は「こちらから一方的に、連続的に何かの行為をする」場合に使います。

例文

  1. 誰も知らないから、いろんな人に聞いていく。☞「聞く」という行為をいろいろな人に連続的にすることを表す。
  2. たくさん野菜が採れたから、近所の人に渡していく。☞「野菜を渡す」という行為を連続的にすることを表す。

 

1回だけだったり、1人にだけの場合は、

「誰も知らないから、〇〇さんに聞く。」

「たくさん野菜が採れたから、〇〇さんに渡す。」と言えばOKです。

 

変化の発生・変化の移動

「てきた」は、変化の発生(感情・自然現象・身体感覚など)を表します。

例文

  1. (今までは楽しかったけど)学校がいやになってきた。☞<感情の変化>
  2. (今までは暑かったけど)だんだん涼しくなってきた。☞<自然現象の変化>
  3. (今までは晴れてなかったが)突然晴れてきた。☞<自然現象の変化>
  4. (今までは痛くなかったけど)痛くなってきた。☞<身体感覚の変化>

 

一方

「ていく」はこれから状態が変化していく、変化の度合いが大きくなっていくときに使われます。

例文

  1. (今もすでに少子化であるが)これからますます少子化が進んでいくだろう。☞すでに起きている少子化の程度がさらに大きく変化する。
  2. (すでにガソリンは高いが)まだまだガソリンは高くなっていくだろう。☞すでに起きている変化の度合いがさらに大きくなる。
  3. (今はまだ暑いが)9月になると少しずつ暑くなくなっていくだろう。☞まだ暑くなっていないが、これから涼しくなる。

 

この表現では否定形「~なくなってきた」「~なくなっていく」の形もよく使われます。

「最近暑くなってきましたね~ι(´Д`υ)」

「思い出すとイライラしてきた(-_-)」

「お腹すいてきた~(*´з`)」

など、会話でもよく使う表現が多いので、ぜひマスターしてくださいね。

 

出現と消失

最後に「出現」と「消失」の使い分けがあります。

出現:今まで見えなかったものが現れ出てくることには「てくる」
消失:今まで存在していたものが消えてなくなることには「ていく」

例文

  1. 20歳になってから、ひげが生えてきた
  2. 30代になってから、白髪が生えてきた
  3. この前植えた種から、芽が出てきた

これらは、今まで存在していなかったものが現れ出てきたことを表します。

 

  1. 太陽が沈んでいく
  2. この頃、どんどん髪が抜けていく

これらは、今まで存在していたものが消えてなくなることを表します。

 

まとめ

以上が、「てくる」「ていく」のよく使う用法です。

  1. 何か動作をしながらの移動(移動手段)・ある状態のままの移動
  2. ある期間の継続的動作・継続的状態
  3. 変化の発生・変化の移動
  4. 途中動作
  5. 一方的な動作・連続的行為
  6. 出現と消失

いろいろな状況で使うものなので、普段の会話でもよく聞く表現です。

よくよく考えてみると、こんな使い分けをしているんですね。

日本語学習者にとっては習得が難しい表現ですが、マスターできるようにがんばりましょう(^_-)-☆